結婚当初暮らしたアメリカのキッチンには
新しい発見がありました。
ぎりぎりの生活だったので
家賃の安い、しかも戦前に建てられた古いアパート。
いまから思えばレトロという表現になるでしょうか?
発見その1、
キッチンの天板の高さが
90センチだった・・・
私の身長から割り出せば85センチが適正のところ5センチも高い。
そこで少しかかとの高いスリッパを使ってしのぐことにしたが
思ったより使いやすい。
その頃一般的には高さは80センチのキッチンが多く
それに比較して随分と楽なものです。
その2、
吊り戸棚の高さが低い
日本の一般的なキッチンでは
吊り戸棚は天井にくっ付けるものと相場が決まっていた。
でもこれはいかにも男の発想
使いにくいから、死蔵品置場になってしまう。
思わず計ってみたら
天板から40センチ女性が手を伸ばして届く範囲に多くの棚が設置できる
この高さ加減に感激
どうしてこんなことが日本では出来ないの?
適切なサイズがいかに心地よいか思い知らされた。
その3
冷蔵庫やガスオーブンが設置されている
安アパートなので食器洗浄器はありませんが。
冷蔵庫は1枚ドアの古いもので霜取りも手動
でもさすがにアメリカ、容量だけは十分でした。
オーブンはそれまで使用したことが無く、
当然のように説明書も無く、適当にスイッチをひねるだけでしたが
単純な仕組みですぐ慣れて その後 大活躍
何しろアメリカというところの
ケーキとパンはまずくとっても日本人の舌には合わないので
自分で作ることを覚えました。
その代わり、電器炊飯器もトースターもなく
鍋とオーブンの酷使
食器の種類も少なく
物の管理に追われないという快適さには
いま思えば すがすがしい
シンプルライフ でした。
それに比べ
いまや贅肉がつきすぎたキッチン !
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いろいろなキッチンに関わってきた 今
こんなキッチンが欲しいと思う動機は一体なんでしょう?
沢山のなかからこれぞと選ぶのは
カタログで決めるなら簡単かもしれません。
でもそれは予算と流行に振り回された単なる結果かも知れません。
誰かドキッとしていませんか?
子供の頃のキッチンは
流しは人造研ぎ出しで かまどでご飯を炊いて という
昭和の台所
その当時、都会では団地が出現し、ステンレスの流し台が出た頃でしょうね。
その影響が地方の住宅にも波及して
しばらくして我が家にも
いわゆるダイニングキッチン、ステンレスの流し台が登場しました。
このときはL型タイプでコーナーのくるくる回る棚が
ものめずらしかったけれど、
置いているものがおちたらなかなか取れない、
コーナーの奥は掃除の手も入らない伏魔殿 のごとき様相で
L型レイアウトのトラウマになっています。
「男は台所に入るものではない」 と明治の女に育てられた父が
こともあろうか、その台所を大工さんと一緒に決めていたのを
憤慨しながら見ていました。
でもこのキッチンこそが
私にとっては こうしてはいけない 反面教師となり
こんなキッチンが欲しいではなく
こんなキッチンをつくってはいけない
1つの動機になっています。
わたしのキッチン で こだわった その2)
これはなんといっても レイアウトでしょう
教科書によると
Ⅰ列型 Ⅱ列型 (または並列型) L型 U型 ・・・と
一番ポピュラーなのは Ⅰ列で 流しとコンロが並んでいるもの
もしくはこれにプラスして背面に作業台を置くタイプ
あるとき L型はハウスメーカーの展示場に多いと気がつきました。
これは多分L型のキッチンが 豪華に見える から らしい。
この時期、気になっていたレイアウトは
流しとコンロが離れていると使いにくいか ?
ということでした。
普通に考えると流しとコンロは並んでいた方が洗った野菜をいためる時に便利
ということになっています。
ところがわたしは 今後、台所は主婦のものだけではない
と強く願っていたので
一人で使う場合に便利でも複数になったらどうなのよ と 疑問がありました。
Ⅱ列型で 片方の作業台に流し、 もう片方にコンロ という組み合わせは
複数で調理をするとき、自分の持ち場が確保できて いいのでは
しかも、コンロの側には換気扇が欲しいから外壁に面していた方が
そして流しはダイニング側を向いてという
いわゆる対面型がいいなということで 迷うことなく 決定!
L型やU型を採用しなかったのは
プランニングとの関係もありますが
キッチンをデッドエンド つまり 行き止まり にしたくなかった
ということも大きな理由です。
我が家のキッチンは 行き止まりどころか
裏動線 となっており
来客時に子供が玄関から あるいは2階から
キッチンを経由して洗面所に行ける という裏技も発揮しています。
キッチンが大好きなくせに
いざ自分のキッチンが持てるとなったとき
さあ、どうしよう・・・・と そのコンセプトに迷いました。
そうそう作り変えるわけにはいかないから
これぞわたしのキッチン といえる
自分らしさにこだわりました。
自分の家こそ他人様では不可能なことへのチャンスとばかり
実験意欲がふつふつと湧き上がり
いいとされているものは使わない
むしろ欠陥があるらしきものにチャレンジする
という あまのじゃくぶりを発揮しました。
その1)は 天板から・・・
台所というだけあって
台が大切なんだと キャンプをしてみるとよくわかる
当時、 一般的な天板といえば
ステンレス
人造大理石 は20年前は今以上に高級品
安価なものならポストフォームという
木のチップを圧縮し、表面をメラミンなどでコーティングしたもの
性能表をみると
なんといってもステンレスが一番
そういう優等生的な成績をとるものには食指が動かない。
一般的ではなかった木の天板は
突出した劣等性で 出来の悪い子ほどかわいいという
母性本能をくすぐられました。
本音はただ木の天板に興味があっただけですが
実は尊敬する林雅子さんの自宅をまねただけかも
熱い鍋を直接置いてはいけない
水が飛び散るのを防がなければならない
など忙しい主婦や無精な主婦にとっては 大敵
ところが知られざる長所もあるもので
経年変化による汚れや傷が目立たない
使い込むほど味が出る
家具のようなやわらかさや暖かみがあり
キッチンが決して作業場ではなく わたしの部屋 のように感じられ
居ることが楽しい のです。
4月になったというのに
今頃お雛様を片付けるとは どういう了見ですか?
「3月になって出したもので すぐに片付けるのもかわいそう」
まあ、我が家は旧のひな祭りでと 毎年言い訳を・・・
最近は5段飾り7段飾りなどの
本格的な雛人形を飾る家庭は少なくなっているでしょうね。
でもこの本格的お雛様を飾るとなったとき
床の間が威力を発揮するんですよね。
我が家の設計で失敗したものの一つに 床の間があげられます。
子供の頃の実家の床の間は一般的な押入れの横の1畳の広さで
横に書院らしきものがついていました。
床の間は普段は花を生けていましたが
つやのある素材でいつも埃がうっすらと積もっているという印象でした。
それでも花があればまだいいけれど
管理に手を焼いている様子が子供心にも感じられました。
そんなことが響いているのでしょうね
なんだか中途半端で いまや収納場所となっていますが。
その代わりちょっとした腰窓の下に作った
奥行き20センチ幅80センチくらいの棚は大変重宝しています。
高さも床から35センチくらいにしたので
埃の被害はあまりないようです。
実はこの棚にお雛様を飾っています。
お内裏様だけのシンプルなものなのでこのサイズでも大丈夫
普段はアンティークの蕎麦猪口とか1輪ざし とか・・・
自分の手に負える物を
考えてみれば和室というものは
その時代と暮らし方を反映して変化してきているので
用途がなくなれば
床の間そのものが無くなっても不思議ではないですね。
もっともっと大事なものが 増えてきているので
人に見せるとか、格好だけとか 大げさである必要はないけれど
気持ちの上で床の間という存在は忘れたくないですね。